「フィルム調」は嫌だ

今、WOWOW中島美嘉のライブ(の録画)番組を放送している。
しかし、画質が、俺の嫌いな「フィルム調」だ。この機会に、ここでとことん「フィルム調」について文句を書きたい。
まず、フィルム調とはこんな感じの映像だ。これがすなわち欠点になる。

  • 残像が残る。腕一本を大きく振るような動作では同時に二本や三本見える。
  • 画と音に一体感がない。アテレコのような雰囲気に見える。
  • 副作用としてジャギーが出る。ジャギーとは水平線が少し傾いたものの輪郭がギザギザに見えることを言う。

これらの見え方は、ビデオ素材(60コマ/秒)をフィルム素材(24コマ/秒)の見え方に近づけるために、故意に加工して、コマ数をほぼ半分に削っているために起こる。
ちなみに別名としては、「フィルム効果」やその省略である「F効果」、あるいは「フィールド効果」などもあるらしいが、とくに確固とした名称が付いているというわけではなさそうである。
昔から、音楽のライブ物の多くには「フィルム調」が付きまとっている。視聴する側からすれば、上記3点のような見づらさがあり、どれもメリットには感じられない。一方、推測になるが、製作者の側から見れば音楽ライブは「フィルム調」にするものだ、という思い込みがあるのではないだろうか。たしかに一見するだけであの独特の雰囲気があり、たとえ MC の場面であっても音楽のひとこまであることが感じ取れる。あと、口パクなどにせざるを得ない場合には、少し画と音がズレていても見た目で気付きにくい、といった作る側の都合の良さがあるのかもしれない。
視聴する側としての不利益は、上記の3点の欠点もそうだが、そもそも見てみるまでは「フィルム調」かどうかが分からないことが大きな不利益だ。放送ならば見てガッカリするだけでまだ済むが,DVD などを購入してしまった後に気付いたら、購入にかかったコストを取り戻すことがほぼ不可能だ。そもそも DVD のパッケージには、収録時間やアスペクト比(4:3 や 16:9)の情報は書いてあるが、「フィルム調」の有無は書いてない。
さらに、「フィルム調」になっているものは情報が欠落してしまっているので、どんなに画像処理を施しても、もう元の非「フィルム調」に戻すことはできない。映画で赤っぽくなっているとかそういうものは、あとでホワイトバランスを調整し直すことで対処できなくもないが、「フィルム調」は元に戻せないはずだ。
このように俺自身はフィルム調にメリットは見出せないが、製作者が意図を持って「フィルム調」にすることまでは否定する気持ちはない。しかし、「フィルム調」にしたのなら、視聴者が著作物の対価を払う前に、「フィルム調」であることを視聴者に知らせてほしい。